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2024/06/14

DXP Cloud でグローバルプラットフォームを統一。Unified Support 活用により運用を高度化し、セキュリティと利便性を両立した富士通の取組

セキュリティガバナンスを強化するべく、グローバル社内 IT クラウド基盤である DXP Cloud の構築・運用に取り組む富士通株式会社。グローバルで統一したプラットフォームにより、セキュリティを実装したクラウド環境をスピーディに提供することで、安全安心と利便性の両方を実現しています。

同社の DXP Cloud のベースには Microsoft Azure を採用。フレームワークを活用した設計、プロセス改善、アジャイル開発、ゼロトラスト、運用の高度化、生成 AI の活用など、Azure の機能やサービスを生かし、次世代プラットフォームを短納期で構築。プロジェクトの成功を支えたのは、上流から運用まで一貫してサポートする Microsoft Unified Support と Support for Mission Critical (SfMC) を主軸とした Azure Rapid Response および Developer Support などの拡張ソリューションです。DXP Cloud は、同サポートのもと改善と進化を続けています。

Fujitsu

グローバルで統一のプラットフォームを実現するDXP Cloud

「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパスの実現に向けて、「One Fujitsu」の自己変革の取り組みを進めている富士通株式会社。中でも「リアルタイムマネジメント」、「データ化・可視化」、「ビジネスオペレーションの標準化」の 3 つを重要な施策と位置づけています。これらを実現するために、主要な業務領域ごとにグループ会社横断で 1 つのグローバルスタンダードに統一するプロジェクトを進めています。社内業務システムが稼働するインフラも例外ではありません。

DX 時代のインフラには、高い次元でセキュリティとスピードが求められます。「従来はリージョン単位でインフラを構築していたため、グローバルにおけるセキュリティガバナンスの強化は急務でした。また事業環境の変化に応えるために、ユーザーに対してスピーディな環境提供も求められていました」と富士通 Digital Systems Platform 本部 Platform Transformation 統括部 シニアディレクター 舘林 剛史氏は振り返ります。

セキュリティとスピードの課題を解決するために、同社が取り組んだのがグローバル社内 IT クラウド基盤である、DXP Cloud です。コンセプトは、運用の自動化を前提に、セキュリティを実装し、スピーディにクラウド環境をユーザーに提供することです。こうして 2020 年 5 月にDXP Cloud プロジェクトがスタートしました。

同社の DXP Cloud の基盤には Microsoft Azure を採用。その理由について舘林氏は次のように説明します。「DXP Cloud は、グローバルで利用できることが基本です。また、セキュリティガバナンスの強化が最優先だったことから、短納期の実現も必要でした。クラウドサービスのグローバルスタンダードである Azure であれば、品質を担保しながら短納期で対応できるというのが採用の大きな理由です」

しかし、評価したポイントはそれだけではありません。「プラットフォームをいかに効率的に運用し、効果の最大化を図っていくかという運用自動化に向け Azure の先進機能を活用できる点を評価しました。クラウド ID やアクセス管理を行う Microsoft Entra ID (旧称 Azure Active Directory)、Microsoft 365 など、既存のマイクロソフト製品との親和性も重視しました」(舘林氏)

DXP Cloud では、Azure によるクラウド ネイティブなネットワークも重要な要素となります。柔軟な働き方とともに、ゼロトラスト(何も信頼しないことを前提とするセキュリティの考え方)を採り入れたセキュリティのバンドル化を実現できるからです。

「Microsoft Unified Support + SfMC」により上流から運用まで一貫してサポート

Azure をベースとした DXP Cloud は、まさにゼロから作り上げたものです。オンプレミスと異なり、目に見えないクラウドでインフラを構築していくためにはサポートの重要性が高まります。そこで同社が活用したのが、クラウド化促進、ITソリューション最適化、デジタルテクノロジー活用などを支援するマイクロソフトの包括的なエンタープライズサポートである Microsoft Unified Support です。

Unified Support について舘林氏は次のように語ります。「一般的なコンサルティングとは異なり、Microsoft Unified Support +SfMC は上流から運用まで現場に寄り添ってサポートしてくれます。DXP Cloud の環境構築は、マイクロソフトの一貫した支援があったからこそ実現できたと思っています」

プラットフォームサービスの提供では、スペックはもとよりセキュリティやネットワークなど必要な要素が多岐に渡ります。「Azure については、マイクロソフトに聞かなければ分からないことがたくさんありましたが、マイクロソフトは常に先を見通して課題を洗い出し、運用プロセスの改善、セキュリティポリシーの適用、支払いの簡素化、トレーニングや情報提供、最新技術の提供、新機能の提案などさまざまな角度からのアドバイスをしてくれました。こうしたプロアクティブな提案によりスピード感を持って、プロジェクトを進めることができたと実感しています」(舘林氏)

クラウドベースのインフラ構築では、設計の考え方も従来とは大きく異なります。「クラウドサービスを利用するメリットの 1 つが、最新技術を組み込むことが容易にできるという点です。現在と将来を見据えながら、拡張性を含めてどのような構成にするべきか。基準となったのが、マイクロソフトが整備したクラウドのフレームワークである Microsoft Cloud Adoption Framework for Azure (以降 CAF) です。CAF をベースに当社の要件をマッチングしたものを、マイクロソフトにレビューしてもらい、その結果を受けてブラッシュアップしていきました」と、富士通株式会社 Digital Systems Platform 本部 Platform Transformation 統括部 シニアディレクター 川田 祐司氏は話します。

CAF に組み込んだ富士通の要件の中で、セキュリティと利便性の両立は重要なポイントとなりました。「オンプレミスの時から、プラットフォームサービスの提供においてセキュリティ申請に多くの時間がかかることに対してユーザーは不満を持っており、DXP Cloud ではこれを解消してほしいという強い要望がありました。」と富士通株式会社 Digital Systems Platform 本部 Platform Transformation 統括部 シニアディレクター 江尻 慎一氏は話し、こう続けます。「解決に向けて鍵となったのが、マイクロソフトからアドバイスのあった Value Stream Mapping (以降 VSM)によるプロセス改善でした」

VSM は、製品・製造やサービス提供に関連するステップを図示して分析するフローチャートです。プロセスの現状を最初から最後までマップに仕立て、付加価値に寄与しない無駄や改善点を明らかにする手法です。これにより関係者間で既存のプロセスとテクノロジを検証し、情報共有が可能になります。「マイクロソフトから VSM のレクチャーを受けた後、実践に入りました。開発、運用など各部門の担当者が集まり、可視化したプロセスを網羅的かつ俯瞰的に見ながら、セキュリティを担保するためのプロセスを改善しました。その結果、NoOps を実現し、運用コストの削減、利用者の利便性向上、セキュリティ確保という、三つの目標を同時に達成することができました。利用者からも高い評価を頂いています。(江尻氏)

DXP Cloudは、NoOps (手動オペレーションをなくす)を目指しています。運用スタッフの負荷を下げ、イノベーティブな作業にシフトしていくことと、利用者がマニュアルを読まずにボタンを押すだけで利用できるサービスの実現が目標です。課題となるのは、各リージョン固有の要望、セキュリティ要件の追加など DevOps による開発で吸収できない要件がプラスされた際に、運用スタッフが手動で対応する作業が増えることです。運用の課題解決にも VSM を活用していると富士通株式会社 Digital Systems Platform 本部 Platform Transformation 統括部 シニアマネジャー 恒川 健文氏は次のように話します。「他のチームだからこそ気づく改善点もあります。また単に作業を自動化すると、すぐに陳腐化してしまう懸念もあります。根幹となるプロセスを改善することで自動化の効果も高まると考えています」

開発手法もウォーターフォール型からアジャイル型へシフト

同社では、事業規模レベルでのアジャイル(小さな単位で実装とテストを繰り返して開発を進めていく手法)を適用することにより、ビジネスの適応能力をかためています。そのために、開発フレームワークとして Scaled Agile Framework (SAFe) を導入しています。DXP Cloud も SAFe の手法を採り入れ、インフラにおける開発もウォーターフォール型(プロジェクトを各工程に分け、確実に工程を進めていく開発手法)からアジャイル型へとシフトしました。

「ウォーターフォール型は仕様を固めてから開発するため、リリースまでに時間がかかります。オンプレミスから DXP Cloud へとシステムを移行する際に生じた要件に対し、リードタイムが長いと、移行推進にブレーキがかかります。そこで、アジャイル型を志向し始めました。まだ道半ばのため、Program Interval (複数のチームでアジャイルに取り組む期間) は 3 カ月です。その中で、ユーザーに価値を提供する単位を細かくすることで、設計からリリースまで最短 3 週間を実現しているケースもあります」(川田氏)

DXP Cloud におけるアジャイル開発では、Azure の機能を使いこなすことが求められます。「マイクロソフトは、私たちの取り組みに合わせた対応をしてくれるので心強く思っています。また、さまざまな情報提供により業務部門に対する提案力も向上しました。たとえば、機器やシステムが発信する大量のイベントを中継するハブである Azure Event Hubs は、業務部門からの使いたいという申し出に対応できましたし、さらに SAFe で Azure DevOps をどう上手く使いこなすか、マイクロソフトのアドバイスは管理コストの削減につながっています」(川田氏)

DXP Cloud では、Microsoft Azure の新機能に関して、使いたいという少数のユーザーに対して基本的な開発だけで提供する場合もあります。他のユーザーからの要望が増えてきた段階で、先行ユーザーからのフィードバックはもとより、さらに評価を加えて多くのユーザーが使える形にして提供。フルマネージドなサーバーレスコンテナサービス である Azure Container Apps はその代表例です。

開発・運用の効率化や価値創出に生成 AI を活用

DXP Cloud プロジェクトは 2020 年 5 月にスタート、2021 年度中に開発し、2022 年 4 月からグローバルでサービス提供を開始しました。今後は、社内業務システムのシンプル化を進めながら、DXP Cloud への移行推進フェーズに入ります。「これまでプラットフォームサービス提供において、『5 日間かかっていたセキュリティ申請が、DXP Cloud ではすぐに完了した』と評価するユーザーの声が寄せられています。一方で、クラウドにシステムを移行することに漫然とした不安を抱くユーザーも存在しているのが現状です。移行を成功するためには、当部と業務部門が一体となって取り組むことが欠かせないと考えています。部門横断でサポートする Microsoft Unified Support に今後も期待しています」(舘林氏)

DXP Cloudの役割は、自社の変革だけではありません。一歩先行くケーススタディとして実践を通じて得た知見やノウハウを、お客様の変革に役立てていくことも重要なテーマです。DXP Cloud では、生成 AI の活用にも積極的に取り組んでいると恒川氏は話します。「マイクロソフトから技術支援に加え、ハッカソン開催のサポートも受けました。今は、ユーザーからの問い合わせ対応が中心ですが、今後は開発・運用の効率化や価値創出に活用シーンを広げていきます」

「DXP Cloud プロジェクトを通じて、従来のインフラとは考え方や意識を変える必要があると改めて認識しました」と舘林氏は話し、言葉を添えます。「社会や企業の課題解決に向けてプラットフォームを提供し、アジャイルに改善しビジネスのスピードや質の向上に貢献していくことが、これからのインフラ担当部門が果たすべき役割だと思います」

“「一般的なコンサルティングとは異なり、Microsoft Unified Support +SfMC は上流から運用まで現場に寄り添ってサポートしてくれます。DXP Cloud の環境構築は、マイクロソフトの一貫した支援があったからこそ実現できたと思っています」”

舘林 剛史 氏, Digital Systems Platform 本部 Platform Transformation 統括部 シニアディレクター, 富士通株式会社

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