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2024/12/03

花王の DX 戦略 - DXAP で進める人財育成の現在地、Microsoft 製品群の統合活用で DX 推進を加速

ESG 視点での「よきモノづくり」を基軸に、グローバル・シャープトップ企業への変革を加速している花王株式会社。そのために重要な役割を担っているのが、全社グローバル規模で進めている DX への取り組みです。まずは、デジタル人財を育成するため、グローバル全社員を対象にした教育プログラムをスタート。さらに生成 AI を活用したデータ基盤拡充の両面から取り組みを推進しています。

社内で使う生成 AI としては、Azure OpenAI Service をベースにした「Kao AI Tools」や、Microsoft Copilot などを提供。またデータ基盤としては、各種マイクロソフト製品を活用した「Kao i-Lake」を提供しています。

このような取り組みよって、DX 人財の数は急速に増えつつあり、データの民主化も進んでいます。今後はこの Kao i-Lake に Microsoft Fabric を導入することも検討。全社員がデータと AI を使いこなしながら、ビジネスや顧客体験の革新を持続的に行える企業になることを目指しています。

花王ロゴ

「グローバル・シャープトップ」を目指し全社規模の DX 人財育成をスタート

1887 年に創業し、1890 年には「花王石鹸」を発売、その後も日本を代表する日用品メーカーとして市場をリードし続けている花王株式会社 (以下、花王)。洗剤やトイレタリー、化粧品、BtoB 衛生製品など、幅広い製品を製造および販売しています。近年は「豊かな共生世界の実現」というパーパスの下、最小限の消費で最大限の価値を実現するための ESG 視点での「よきモノづくり」を基軸に、お客様との絆を重視するロイヤリティ・マーケティングへのシフトを推進。そのために重要な役割を担っているのが、全社規模で進めている DX への取り組みです。

「2018 年に現在の社長が先端技術戦略室を設置し、まずは IT に強い人財を集めて、9 つの領域で DX への取り組みを開始しました」と振り返るのは、花王 DX戦略部門 DX戦略デザインセンターでセンター長を務める桑原 裕史 氏。2021 年には「事業の DX 推進」を本格化し、2022 年 12 月に生活者と直接つながる、双方向の新たなデジタル プラットフォーム「My Kao」の運用を開始しました。

DX への取り組みをさらに加速するため、2023 年 11 月にはグループ全社員のデジタル スキル向上を目指す「DX アドベンチャー プログラム (以下、DXAP)」もスタート。花王の中期経営計画「K27」では、「グローバル・シャープトップ (顧客の重大なニーズに、エッジの効いたブランドやソリューションで世界 No.1 の貢献をすること)」を掲げていますが、そのためにはより多くのデジタル人財を育成することが不可欠だと判断されたのです。

「DXAP ではデジタル人財のスキル レベルを、”ビギナー“ ”インターミディエイト“ ”アドバンスド“ ”エキスパート“ ”リーダー“ の 5 段階に分け、段階的な人財育成を進めています」と説明するのは、花王 全社DX推進部で部長を務める内山 徹也 氏。また、スキルの可視化も重視しており、DX スキル診断を設定していると言います。

DXAP のスタート時には、常務執行役員DX戦略部門統括を務める村上 由泰 氏が全社にビデオ メッセージを発信。これと同時に DXAP の第 1 期として、ビギナー向けのコースが始まっています。これはまず DX スキル診断をしたうえで、個々人に最適な学習コンテンツを提供し、履修を通じて DX への理解を深めていくというもの。このコースには現時点で約 1 万 6,000 名が受講し、そのうち 8 割が既に修了しています。

さらにそのうち 95% の社員は、2024 年 5 月に始まったインターミディエイト向けコースへと進んでいます。2024 年 10 月には、アドバンス向けコースも始まる予定。ビギナー向けコースも継続しており、2024 年 3 月には日本語を母国語としない社員を対象にしたコースもスタートしています。

花王の DXAP はまだ始まったばかりですが、全社員がデータと AI を使いこなしながら、変革が常態化している企業を目指しています。最終的に目指すのは、DX という言葉が社内からなくなること。そのような状態を 2027 年までに実現したいと考えています

桑原 裕史 氏, DX戦略部門 DX戦略デザインセンター長, 花王株式会社

生成 AI 活用コースも開始、Azure OpenAI Service をベースに「Kao AI Tools」も提供

このような DXAP への取り組みの中、インターミディエイト向けのカリキュラムとして、2024 年 5 月に始まったのが「Kao AI Academy」です。生成 AI に関する基本的な知識を学習する「フレンド コース」と、エントリー形式でワークショップに参加し実際にプロンプトを書いてみる「マスター コース」の 2 本立てで、生成 AI に関する人財育成が進められています。

フレンドコースはスタートして 3 週間で 3,000 名、現時点では 10,000 名が修了しています。

マスター コースは、生成 AI を実務に活かす発想と、Microsoft Copilot を利用できるスキルの習得が目指されています。これは現時点では約 1,500 人が受講しています。

Kao AI Academy の開始に先立ち、2023 年 11 月から 2024 年 4 月にかけて、マイクロソフトと共同で生成 AI の勉強会も行われています。花王の工場まで出向いて生成 AI の基本や技術的なバックグラウンドを説明するほか、マーケティングにおける生成 AI 活用のユースケース、クリエイティブにおけるアイデア出しでの生成 AI 活用法など、さまざまな内容の勉強会がマイクロソフトと共に行われました。これについて花王 DX戦略部門 DX戦略デザインセンターの吉岡 光司 氏は、「マイクロソフトと共同で行った勉強会で培ったノウハウを、Kao AI Academy のカリキュラムにも反映しています。このような支援によって、生成 AI 教育を円滑にスタートできました」と述べています。

花王における生成 AI 教育で、もう 1 つ注目すべきポイントがあります。それは、「Kao AI Tools」の存在です。これについて内山 氏は次のように説明します。

「2023 年 1 月には数十人規模で ChatGPT のテストを始めていましたが、情報セキュリティ上の問題を感じていました。そこで全社で使ってもらう生成 AI に関しては、Azure OpenAI Service を採用し、ユーザー インターフェイスは Azure Web Apps で自社開発、入力情報が社外に漏洩しない環境を実現しています。これを 2023 年 6 月に『Kao AI Tools』として提供開始し、利用ガイドラインも同時にリリースしました」。

花王ではこの Kao AI Tools の他に、Microsoft Copilot も全社員が使えるようになっています。また、2023 年 12 月には、Copilot for Microsoft 365 のトライアルも 300 名規模でスタート。2024 年 4 月には 1,000 名規模へと拡大し、全部門での活用を進めています。

全社で使ってもらう生成 AI に関しては、Azure OpenAI Service を採用し、ユーザー インターフェイスは Azure Web Apps で自社開発、入力情報が社外に漏洩しない環境を実現しています。これを 2023 年 6 月に『Kao AI Tools』として提供開始、利用ガイドラインも同時にリリースしました

内山 徹也 氏, DX戦略部門 DX戦略デザインセンター 全社DX推進部 部長 博士 (工学), 花王株式会社

新たなデータ基盤「Kao i-Lake」の構築で「データの民主化」も推進

このような DX人財育成と生成 AI活用が進められる一方で、これらを支える社内のデータ基盤も整備されています。それが、2020 4月に構築が開始され、2021 2月にリリースされた「Kao i-Lake」です。

「データ基盤の構築は、統合 DBの構築など以前から何度も取り組んできましたが、収集したデータをきちんと整理かつ管理しておかないと利用されない、ということを痛感していました」と振り返るのは、花王情報システム部門 CRM MDPグループで担当部長を務める狩俣謙次氏です。既にデータ活用の「出口」としては、自然言語での情報検索/参照や、モバイルでの売上・や市場シェアの表示、紙帳票と同じ感覚での情報閲覧などが可能な「i-Kao」を 2018年から企画し、Power BIなどを活用することで段階的に提供してきましたが、より柔軟かつ自由度の高いデータ活用を進めていく目的には、データ基盤の整備と高度化が不可欠だと考えていたと言います。

そのために採用されたのが、Azure Data Lake Storage Gen2 Azure Synapse AnalyticsMicrosoft Purviewです。また ETLとして Azure Data Factoryも活用されています。

マイクロソフトと共同で行った勉強会で培ったノウハウを、Kao AI Academy のカリキュラムにも反映しています。このような支援によって、生成 AI 教育を円滑にスタートできました

吉岡 光司 氏, DX戦略部門 DX戦略デザインセンター 全社DX推進部 戦略企画室長, 花王株式会社

Azure Synapse Analyticsはパワフルでスケールアップしやすく、大規模なデータにも対応しやすいという利点があります。また Azure Data Factoryは、どこから来たデータなのかわかりやすいため、データの可視化が容易です。既に 2018年から市場データ収集に Azure Synapse Analyticsを使用しており、社内に SQLの技術者が多いこともあり、これらの組み合わせで Kao i-Lakeを構築することにしました」。

社内外の膨大なデータを Kao i-Lakeに統合することで「データの民主化も進みつつあります」と吉岡氏。以前は製品に関する各種情報を知りたい場合、その製品に関わる事業部門の担当者に問い合わせる必要がありましたが、今では担当者に問い合わせることなく、全社横断で必要な情報にアクセスできると言います。「たとえば、ある原材料の調達が難しくなった場合に、どの製品に影響があるのか、それによって売上がどう変化するのかまで、すぐにわかるようになりました」。

また花王では 2023年に、原材料価格の高騰を反映した適正価格に転換するため「戦略的値上げ」を実施していますが、このような判断が行えたのも Kao i-Lakeがあったからだと狩俣氏は指摘します。適切な経営判断をタイムリーに下すうえでも、重要な貢献を果たしているのです。

今後は i-Lake の構成要素として、Microsoft Fabricを追加することも検討されています。2024 6月には PoCが始まっており、現在は部門別に分かれているデータレイクを「ワンレイク化」できるものとして、大きな期待が寄せられています。この PoCが順調に進めば、将来は Azure Data Factory + Azure Synapse Analyticsの組み合わせを、段階的に Microsoft Fabricへと移行していきたいと狩俣氏は語ります。

「花王の DXAPはまだ始まったばかりですが、全社員がデータと AIを使いこなしながら、変革が常態化している企業を目指しています。最終的に目指すのは、DXという言葉が社内からなくなること。そのような状態を 2027年までに実現したいと考えています (桑原)

Azure Synapse Analytics はパワフルでスケールアップしやすく、大規模なデータにも対応しやすいという利点があります。また Azure Data Factory は、どこから来たデータなのかわかりやすいため、データの可視化が容易です

狩俣 謙次 氏, 情報システム部門 CRM部 MDPグループ 担当部長, 花王株式会社

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