Trace Id is missing
2024/12/03

新規事業への進出でソフトウェア開発の比重が増大した東芝テック、その生産性向上を目指した PoC で明らかになった「GitHub Copilot の 2 つの効果」

リテールソリューション事業とワークプレイスソリューション事業で培った膨大な「タッチ ポイント」を起点に事業ドメインを拡大し、「グローバル トップのソリューション パートナー」になることを目指している東芝テック株式会社。持続的な成長の実現に向けて、事業転換と企業変革を進めていく中で、ソフトウェア開発の比重が増大したため、その生産性をいかにして高めるかが重要な課題となっていました。

その解決策の 1 つとして取り組まれているのが、開発現場における生成 AI の活用です。2023 年 11 月には GitHub Copilot を導入し、約 300 名の開発者が参加する PoC が行われています。

その結果、GitHub Copilot を使うことで開発者の「well-being (幸福度)」が高くなる傾向があることと、利用期間が長期化するほど GitHub Copilot が提案するコードの採用率が高くなることが明らかになりました。この結果に基づき、現在では GitHub Copilot の活用を拡大する取り組みを推進。開発の上流工程からコーディング、テスト、実行に至るまで、生成 AI による生産性向上を実現していくことを目指しています。

Toshiba Corporation

比重が高まる「ソフトウェア開発」の生産性向上が大きな課題に

東芝テック株式会社 (以下、東芝テック)は、リテールソリューション事業とプリンティングソリューション事業を手掛けています。POSシステムのシェアは日本/世界共に No.1となっており、世界中で稼働している同社のデジタル複合機 (MFP:Multifunction Peripheral)も約 140万台に上っています。これらのビジネスを通じ、グローバルな顧客基盤と営業、保守網を保有していることは、同社の大きな強みとなっています。

現在ではこれらの主要事業に加え、新規ビジネスも積極的に推進。膨大な顧客との「タッチポイント」を起点に、事業転換と企業変革に取り組んでいます。その最大の目的は、共創によって新たな価値を創出し、廃棄ロスや CO2の削減、人手不足対応、店舗/オフィスの最適化といった、社会課題解決を推進していくこと。これによって「グローバルトップのソリューションパートナー」になることを目指しています。

また、リテールソリューション事業では、戦略パートナーとの共創によりグローバルリテールプラットフォーム「ELERA」の開発を強力に推進。米国テキサス州ダラスに「Innovation & Incubation Center」を新設し日米連携を強化するなど、グローバル経営の強化も積極的に進めています。

「これらの事業転換と企業変革を進める中で高まってきたのが、ソフトウェア開発の比重です」と語るのは、東芝テックで執行役員統括技師長技術戦略部部長を務める平和樹氏。それまでもソフトウェア開発を数多く手掛けてきましたが、その多くは POSシステムや MFPのハードウェアに実装されるファームウェアが中心であったのに対し、現在ではハードウェア向けからクラウド上で動くソフトウェアまで、幅広い開発を行う必要が生じているのだと言います。

「ELERAのプラットフォームもクラウド上のマイクロサービスとして実装されており、このポテンシャルを引き出し、顧客のニーズに合わせた開発を行うことが重要です。また新規事業の中に含まれるデータサービス領域においてもソフトウェア開発が成功の鍵を握っています」。

ここで大きな課題になったのが、ソフトウェア開発の生産性をいかにして高めるか、ということでした。そしてその解決策の 1つとして着目されたのが、生成 AIの活用だったのです。

GitHub Copilot による well-being は、コーディング時間が長いユーザーほど高くなる傾向があることもわかっています。また、コード採用率は、利用期間が長くなるほど高くなる傾向があり、well-being 指数が高いほどコード採用率が高くなる、といった関連性もわかっています

平 和樹 氏, 執行役員 統括技師長 技術戦略部 部長, 東芝テック株式会社

Customer Photo: 東芝テック 3 名の紹介写真

生産性向上に向け生成 AI活用へ、GitHub Copilotを採用し PoCを実施

「プラットフォームELERAをベースとした開発が既に始まっていた中、2022年 11月には ChatGPTが一般公開され、翌年の 1月に北米で開催されたリテール向け大型イベント『NRF 2023』でも、生成 AIを活用した数多くの展示が行われていました」と平氏。東芝テックでも 2013年に「青果を直接認識する」画像式スキャナをリリースするなど、AIの開発は以前から行っていたこともあり、生成 AIの登場が、ソフトウェア開発の生産性向上にも大きく寄与すると考えたと言います。「また、『リテールプロモーション最適化 AIソリューション』の開発を検討していたことも契機となり、生成 AIのソフトウェア開発適用にすぐに取り組むべきだと考えました」。

そこで平氏が率いる技術戦略部は、2023年 4月に「生成 AIへの全社対応を行う必要がある」と経営層に提言。ソフトウェア開発適用については、高い導入効果が見込まれるコーディングアシストから利用を始め、その効果を定性/定量の両面から評価することにしました。

コーディングアシストツールの選定では、4種類の製品やサービスを比較検討したうえで、GitHub Copilotを採用しています。その理由について、リサーチ&デベロップメントセンターフェロー柿野友成氏は、次のように説明します。

「検討した 4つのコーディングアシストツールは、コストはほぼ横並びでしたが、機能と導入実績、知的財産権侵害リスクについてマイクロソフトが責任を負う『Copilot Copyright Commitment』が決め手となり、GitHub Copilotを採用しました。また、活用事例が多く公開されていたことも、採用を後押しする安心材料になりました」。

これらに加え、対応する開発言語や IDE (Integrated Development Environment:統合開発環境)が多いこと、バックボーンとなる LLMが定評のある GPTであること、ユーザーが入力した情報を学習に使わないというプライバシーポリシーが明記されていること、公開されているドキュメントや情報が他のコーディングアシストツールと比べ、圧倒的に多かったことも判断材料になったと言います。

このような検討を約 4か月間行ったうえで、2023年 10月に GitHub Copilotの採用を正式決定。その翌月から約半年間にわたり、実際の開発業務で GitHub Copilotを活用し、その効果を評価する PoCを進めていきました。

PoC実施に際し、社内だけではなく国内関係会社に対しても参加を呼びかけ、約 300名に自由に使ってもらうことで、大きく 2つの効果が明らかになりました。

検討した 4 つのコーディングアシスト ツールは、コストはほぼ横並びでしたが、機能と導入実績、知的財産権侵害リスクについてマイクロソフトが責任を負う『Copilot Copyright Commitment』が決め手となり、GitHub Copilot を採用しました。また、活用事例が多く公開されていたことも、採用を後押しする安心材料になりました

柿野 友成 氏, 技術戦略部 リサーチ&デベロップメントセンター フェロー, 東芝テック株式会社

PoCで明確になった 2つの効果、今後は開発プロセス全体に活用を拡大

その 1つが、ユーザーの「well-being」が高いことです。これは、GitHubとビクトリア大学、Microsoft Researchのメンバーによって提唱された、開発者の生産性を多面的に評価するための「SPACEフレームワーク」に採用されている指標の 1つで、開発者の幸福度を自分自身の主観で評価してもらう、というものです。

回答の選択肢は「とてもそう思う (5)」「そう思う (4)」「どちらでもない (3)」「そう思わない (2)」「まったくそう思わない (1)」の 5つ。数字の大きい回答の割合が多いほど、ユーザーの幸福度の向上に寄与していると評価できます。東芝テックでの結果は図 1に示すように、「とてもそう思う (5)」「そう思う (4)」の割合が、「そう思わない (2)」「まったくそう思わない (1)」の割合を大きく引き離していることがわかります。

もう 1つは、コード採用率の変化です。PoCを開始してから 3か月後の 2024 2月には 26.5%でしたが、そのさらに 5か月後にあたる 2024 7月には 35.8%に上昇しているのです。

これらの結果について、平氏は次のように補足します。

GitHub Copilotによる well-beingは、コーディング時間が長いユーザーほど高くなる傾向があることもわかっています。また、コード採用率は、利用期間が長くなるほど高くなる傾向があり、well-being指数が高いほどコード採用率が高くなる、といった関連性もわかっています」。

その一方で、自身もユーザーの一人としてこの PoCに参加し、主に GitHub Copilot Pythonでの開発に活用している柿野氏は、次のように述べています。

「ある程度までコードを書くと、まるでこちらが考えていることを理解しているかのように、その後のコードをかなり正確に生成してくれるので驚きました。また、コード記述を補完してくれるだけではなく、コメントを書いてコードを生成してもらう、デバッグ時に適切なコードを提案してもらう、といった使い方も可能。実際に使ってみると、その利便性が実感できます」。

2024 5月には PoCが終了。その後は大きく 2つの取り組みを進める計画になっています。1つは、ソフトウェア開発における「設計/テストフェーズ」に GitHub Copilotを浸透させ、工数削減や知識補完などの効果を最大化していくこと。もう 1つは生成 AIを「上流工程」にも展開することで、要件定義などの品質を向上させ、開発の後戻りを最小化していくことです。

「これらの取り組みを進めていくため、現在は利用ガイドの整備や社内コミュニティ活性化のための勉強会の企画などを行っています」と言うのは、エンジニアリング全般を支援する、グローバルモノ創りセンターエキスパートの芹澤孝宜氏。具体的な成功事例を社内で共有することで、生成 AIの活用事例を増やしていく、といったことも考えていると語ります。

「エンジニアリングの生産性を高めていくため、今後も GitHub Copilotを軸に、生成 AIの活用を拡大していきます。特に GitHub Copilot Workspaceは、自然言語で計画/ビルド/テスト/実行ができると聞いており、ソフトウェア開発全体を大きく効率化できるのではないかと期待しています」。

エンジニアリングの生産性を高めていくため、今後も GitHub Copilot を軸に、生成 AI の活用を拡大していきます。特に GitHub Copilot Workspace は、自然言語で計画/ビルド/テスト/実行ができると聞いており、ソフトウェア開発全体を大きく効率化できるのではないかと期待しています

芹澤 孝宜 氏, 技術戦略部 グローバルモノ創りセンター エキスパート, 東芝テック株式会社

Customer Photo : 東芝テック 3 名の集合写真

これに加え、Azure OpenAI Serviceを活用し、高度な自然言語処理を開発プロセスに組み込んでいくことも視野に入れていると言います。

最後に、「GitHub Copilotに限らず、マイクロソフトの技術革新に対しては常に高い期待を持っています」と平氏。特に AI技術の発展とその実用化では、今後も重要な役割を果たしていくことを期待したい、と語ります。「サポートやトレーニングに関しても、今回の PoCではさまざまな形でご支援をいただきました。これからも新しい技術やツール提供に加え、その活用や問題の解決など、迅速かつ適切なサポートが提供されることを期待しています」。

さらに詳しい情報を見る

次のステップに進みましょう

Microsoft でイノベーションを促進

カスタム ソリューションについて専門家にご相談ください

ソリューションのカスタマイズをお手伝いし、お客様独自のビジネス目標を達成するためのお役に立ちます。

実績あるソリューションで成果を追求

目標達成に貢献してきた実績豊かな製品とソリューションを、貴社の業績をいっそう追求するためにご活用ください。

Microsoft をフォロー