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2025/02/26

データ活用民主化を推進するヤマシタ、そのためのデータ基盤として Microsoft Fabric を採用、全国 70 以上の拠点全てに DX 人財を配置することを目指す

利用者を中心に 360 度のサービスを提供し「在宅介護のプラットフォーマー」を目指しているヤマシタ。その実現のために重視しているのは、DX 人財を増やすことで「民主化」を推進することです。そして、プラットフォーマーとして数多くのサービスを展開していくには、マーケットの反応をリアルタイムに把握すると共に、お客様への理解と洞察を深めていくことも不可欠。そのためには個別サービス群の多様なチャネルを超えた、シームレスなデータ基盤が必要でした。

このようなデータ基盤としてヤマシタが採用したのが Fabric でした。その最大の理由は、データの民主化を推進するために、AI の力を活用してデータの可視化・分析のハードルを低減できる点が高く評価されたからです。Fabric の正式リリースは 2023年 11 月でしたが、その前月には採用を決定。プレリリース版の段階からデータ基盤構築に着手しています。2024  年 2  月には、最も複雑かつ高度なデータ分析が求められるホームケア事業部での活用がスタート。さらにリネンサプライ事業部での活用も、2024 年 6 月に始まっています。

以前は Excel シートなどで行われていた営業部門へのデータ提供を Fabric へと移行したことで、データ作成に費やされていた工数が不要になりました。また、以前は週次/月次で提供していたデータもいつでも確認できる状態になり、営業現場での意思決定スピード向上に貢献しています。既に Fabric でダッシュボード作成できる ”シチズンデータサイエンティスト” が 十数名にまで増えていますが、その数を 2025 年 3 月までに一気に増やし、各事業所および営業所に最低 1 人は配置できるようにする計画です。

Yamashita Co Ltd

目標は「在宅介護のプラットフォーマー」、そのためには DX 人財を増やすことが必須

1963 年に静岡県清水市で創業し、リネンサプライ業からビジネスをスタートした株式会社 ヤマシタ (以下、ヤマシタ)。1976 年には関東・関西へ進出し、1986年には介護用品レンタル・販売事業にもビジネス領域を拡大しています。リネンサプライ事業における契約継続率は 99.9% ときわめて高く、介護用品レンタル・販売も業界最大規模。また業界大手では唯一「365 日対応」を行っている企業としても知られています。

2022 年 12 月には「EX (仕事のやりがい) → CX (顧客体験) を強みに非連続成長へ」という「長期ビジョン 2030」を発表。利用者を中心に 360 度のサービスを提供する「在宅介護のプラットフォーマー」を目指しています。そのために重視されているのが、DX 人財を増やすことでデータ活用の「民主化」を推進することです。

「既に AI を組み込んだテクノロジーが登場しており、その進化は今後も加速度的に進んでいくはずです」と語るのは、社長室で DX推進責任者を務める小川 邦治 氏。このテクノロジーを使いこなせる DX 人財の数を増やすことが、今後 10 年のヤマシタの成長を大きく左右する要因になると言います。そして DX 人財を増やしていくには、そのためのデータ基盤の存在が不可欠になるとも指摘します。

「在宅介護のプラットフォーマーになるには、既存事業を超えた数多くのサービス群を提供することになりますが、これらによってお客様体験を高めていくには、マーケットの反応をリアルタイムに把握すると共に、お客様への理解と洞察を深めていくことが欠かせません。ここで重要になるのが、個別サービス群の多様なチャネルを超えた、シームレスなデータ基盤です。これによって、データを自由に使って業務を改善できる ”シチズンデータサイエンティスト” を増やし、データ活用を民主化していくことが重要なのです」。

そのデータ基盤として小川 氏が着目したのが Fabric です。その正式リリースは 2023 年 11 月でしたが、小川 氏はその前月に採用を決定。その理由について次のように説明します。

「Fabric に搭載されている AI 機能を活用することで、自然言語によるデータ活用が可能になるという点に魅力を感じました。また、既にローコード/ノーコード開発のためにヤマシタが利用している Microsoft Power Platform とも相性がよく、今後開発を拡大していくうえでも大きな貢献を果たすはずだと評価しました」。

さらに、正式リリース前に採用を決定したもう 1 つの理由として、これをヤマシタにおけるデータ活用の民主化の「フラッグシップ」にしたかったと述べています。

小川 邦治 氏, 社長室 DX推進責任者, 株式会社ヤマシタ

Fabric  に搭載されている AI機能を活用することで、自然言語によるデータ活用が可能になるという点に魅力を感じました。また、既にローコード/ノーコード開発のためにヤマシタが利用している Microsoft Power Platform とも相性がよく、今後開発を拡大していくうえでも大きな貢献を果たすはずだと評価しました

小川 邦治 氏, 社長室 DX推進責任者, 株式会社ヤマシタ

最も複雑で高度なデータ分析領域から Fabric の活用をスタート

2023 年 10 月には Fabric のプレビュー版でデータ基盤構築に着手。パートナーとしては、マイクロソフトが紹介した株式会社ジール (以下、ジール) を採用しています。その理由は、マイクロソフト ソリューションに関する豊富な知識と数多くの構築経験があること。また「Azure を使用した分析」分野の Advanced Specialization を 2021 年に国内第一号で取得しており、Fabric について多くの知識を有していたことも、採用のポイントになりました。

マイクロソフトはジールを紹介する一方で、「Azure Innovate」の活用も提案。これはクラウドと AI の導入を加速するためにマイクロソフトが提供している支援プログラムであり、その中には資金面での支援も含まれています。これに関して、社長室で DX推進マネージャーを務める仲山 紘史 氏は、次のように語ります。

「Fabric は登場したばかりの製品であり、弊社もかなり早期に導入を決定したユーザーだったため、どれだけの ROI が得られるのかを算定するための参考になる先行事例がありませんでした。しかし Innovate で資金面での支援が受けられれば、導入および構築コストを削減でき、最初のハードルを下げることができます。これは社長を説得するうえでも、有効な材料になりました」。

2023 年 11 月には、介護用品レンタルと販売を行うホームケア事業部における開発プロジェクトに着手。ここからスタートした理由について、システム部の小松崎 一希 氏は、次のように説明します。

「ホームケア事業部は個人を対象とした介護保険ビジネスを行っているため、利用者の数が常に変動しており、その推移を正しく把握することが不可欠です。その中核と言えるのが、介護用品レンタル・販売の新規および追加契約件数を把握するための表です。これは数多くのデータが複雑に絡み合い、データ分析のロジックも高度です。つまり、社内で最も難易度が高い領域から取り組みを開始したのです」。

そのためのデータ整理を 2023 年 12 月まで実施し、2024 年 2 月には最初のダッシュボードを営業部門向けに提供。その後も、1 営業担当者あたりの顧客数を要介護度ごとに可視化するダッシュボードや、総売上分析用のダッシュボードなどを作成かつ提供しています。なおこれらのダッシュボード作成の多くはデータ整備と共にジールが担当しましたが、最後の総売上分析用ダッシュボードは、ヤマシタ社内で内製化されています。

仲山 紘史 氏, 社長室 DX推進マネージャー, 株式会社ヤマシタ

Fabric は登場したばかりの製品であり、弊社もかなり早期に導入を決定したユーザーだったため、どれだけの ROI が得られるのかを算定するための参考になる先行事例がありませんでした。しかし Innovate で資金面での支援が受けられれば、導入および構築コストを削減でき、最初のハードルを下げることができます。これは社長を説得するうえでも、有効な材料になりました

仲山 紘史 氏, 社長室 DX推進マネージャー, 株式会社ヤマシタ

データ作成の作業は不要に、朝出社してすぐに最新データでの意思決定が可能

「以前は私を含む 4 名のチームで、毎日午前中を費やして営業部門向けのデータを Excel シートで作成し提供していました」と振り返るのは、ホームケア事業本部の丸木 菜摘 氏。たとえば最初にダッシュボード化された「介護用品レンタル・販売の新規/追加契約件数」の表は、日次でデータを提供するために、毎日 1 時間が費やされていたと言います。またデータ作成に費やせる工数が限られていたこともあり、主要なデータ以外は週次/月次の提供にならざるをえなかったとも語ります。

「Excel によるデータ提供を Fabric へと移行したことで、このようなデータシートの作成が不要になりました。今では営業担当者が朝出社すると、最新データが反映されたダッシュボードが Fabric のワークスペース内に用意されています。ある営業所長からは、毎朝データを見てすぐに判断できるようになったと、嬉しい反応をもらいました。また以前は週次/月次で提供していたデータも、今では常に最新のデータを見られるようになったため、毎回のデータ提供のための作業が大幅に削減されました」 (丸木 氏)。

事業本部による Excel シートの作成を行うためには、システム部によるデータ準備も必要でしたが、これも不要になりました。「以前は日次レポート用のデータを抽出するため、平日の夜に 1 時間ほど残業して作業を行っており、スポット依頼を受けた場合には 1 ~ 2 日程度のデータ処理を追加で行う必要があるため、タイムリーにデータを提供することが困難でした」と言うのは小松崎 氏です。この負荷がなくなったうえ、「すぐに依頼に対応できない」という状況が解消されたことも、大きなメリットだと指摘します。

さらに、以前は事業本部で作成した Excel シートを元に、各営業拠点でデータを加工するということも行われていましたが、このような作業も不要になりました。ダッシュボードを操作することで、各営業拠点に必要な分析も自由に行えるからです。

「営業所でのデータ加工の多くは、営業所の所長が行っていました。この作業がなくなったことで、本来の仕事である戦略立案に集中しやすくなったとも伺っています」 (丸木 氏)。

丸木 菜摘 氏, ホームケア事業本部 営業統括部 データアナリティクスチーム リーダー, 株式会社ヤマシタ

Excel によるデータ提供を Fabric へと移行したことで、このようなデータシートの作成が不要になりました。今では営業担当者が朝出社すると、最新データが反映されたダッシュボードが Fabric のワークスペース内に用意されています。ある営業所長からは、毎朝データを見てすぐに判断できるようになったと、嬉しい反応をもらいました。また以前は週次/月次で提供していたデータも、今では常に最新のデータを見られるようになったため、毎回のデータ提供のための作業が大幅に削減されました

丸木 菜摘 氏, ホームケア事業本部 営業統括部 データアナリティクスチーム リーダー, 株式会社ヤマシタ

ホームケア事業部での成果を受け、リネンサプライ事業部でも Fabric 活用を開始

2024 年 6 月にはリネンサプライ事業部でも Fabric を活用したダッシュボードの開発が始まっています。その背景として「標準原価を適用したコストと収益を顧客毎に把握しようという取り組みが、2024 年 4 月に始まったからです」と説明するのは、経理本部 管理会計課長で、リネンサプライ事業部向けのダッシュボード開発も担当している谷村 亮 氏です。

「企業を相手にした B to B ビジネスであるリネンサプライ事業では、日次で利用者の増減を把握する必要はありませんが、売上に対するコストや利益が取引先毎に異なっており、それを可視化する必要があります。以前は Excel や Microsoft Access でデータを可視化していたのですが、既にホームケア事業部での成果が出始めていたため、リネンサプライ事業部でも Fabric を使おうという話になりました」。

2024 年 8 月には顧客別収支のダッシュボードの提供を開始。Fabric へのデータ集約はジールが担当しましたが、ダッシュボードは谷村 氏が自ら作成しています。

「Fabric を使うのは当然ながら今回が初めてでしたが、簡単にダッシュボードを作成できました。ヒアリングで確認したユーザーニーズに合わせた画面を GUI で感覚的に作り込めるのです。使用するデータがデータマートの形で整備されていれば、本来の業務の合間に 30 分程度で作成可能。表示色などのデザインにこだわらなければ、30 分もかからないかもしれません」 (谷村 氏)。

現在 (2024 年 11 月) はまだ必要なダッシュボードが揃ったばかりであり、「これらの効果が出るのはこれからです」と谷村 氏。しかし「営業上の気付き」は既に生まれ始めていると言います。

谷村 亮 氏, 経理本部 管理会計課 課長, 株式会社ヤマシタ

Fabric を使うのは当然ながら今回が初めてでしたが、簡単にダッシュボードを作成できました。ヒアリングで確認したユーザーニーズに合わせた画面を GUI で感覚的に作り込めるのです。使用するデータがデータマートの形で整備されていれば、本来の業務の合間に 30 分程度で作成可能。表示色などのデザインにこだわらなければ、30 分もかからないかもしれません

谷村 亮 氏, 経理本部 管理会計課 課長, 株式会社ヤマシタ

短期的、中長期的のいずれの観点でも、Fabric がデータ基盤として最適だと判断

このような一連の取り組みについて、小松崎 氏は次のように述べています。

「当社の Fabric 活用における最も重要なポイントは、現場業務で必要なダッシュボードの開発を事業部門主体で進めていることだと言えるでしょう。システム部はあくまでも、データモデルの提供までを担当しているのです。現在は構造化データのみの提供となっていますが、今後は非構造化データも用意し、Fabric のデータレイクをさらに使いこなしていきたいと考えています」。

現時点でダッシュボードを作成できる人材は、DX推進部やデータアナリティクスチームを中心に十数名。「今後はこの数を増やし、2025 年 3 月までには全事業所、営業所に最低 1 名は ”シチズンデータサイエンティスト” を配置できるようにしたい」と小川 氏は言います。

「今のところは営業系 KPI 関連のデータ分析が主体になっていますが、社内からは高い評価を受けており、今後は適用範囲をさらに拡大し非構造化データもまとめていきます。また Fabric に統合したデータを使った生成 AI の活用も推進していく計画です」と小川 氏。「短期的、中長期的のいずれの観点でも、Fabric はデータ基盤として最適だと判断しています」。

小松崎 一希 氏, システム部 企画開発課, 株式会社ヤマシタ

当社の Fabric 活用における最も重要なポイントは、現場業務で必要なダッシュボードの開発を事業部門主体で進めていることだと言えるでしょう。システム部はあくまでも、データモデルの提供までを担当しているのです。現在は構造化データのみの提供となっていますが、今後は非構造化データも用意し、Fabric のデータレイクをさらに使いこなしていきたいと考えています

小松崎 一希 氏, システム部 企画開発課, 株式会社ヤマシタ

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